運動器疾患
代表的な運動器疾患
- 首の痛み:頚椎症・頚椎椎間板ヘルニア
- 肩の痛み:肩関節周囲炎・肩腱板断裂
- 腰の痛み:腰部脊柱管狭窄症・腰椎椎間板ヘルニア
- 股の痛み:変形性股関節症・大腿骨頭壊死症
- 膝の痛み:変形性膝関節症・半月板損傷
- 足の痛み:足関節捻挫・有痛性外脛骨障害
骨・関節・筋肉・腱・靱帯・脊椎・脊髄・末梢神経などの運動器疾患と、スポーツ・交通事故・労災などによる外傷を扱います。
レントゲン・運動器エコー・骨密度測定・診察所見から当院では医師による注射やリハビリ治療を含め、患者様一人一人に合った治療を行います。腰椎疾患の方で適応患者様には、神経ブロック注射も行います。
症状は大きく3つに分けられます。
➀首・肩甲骨付近の痛みや肩こりなどの症状がでます。首を動かすと痛みが増しますが、手のしびれなどはありません(局所症状)。
②主に片方の首~肩~腕~手にかけての痛み、しびれ、力が入りにくいなどの症状です。これは脊髄の枝(神経根)の障害によるものです。(神経根症)
③両方の手足がしびれたり、動きが悪くなったりします。ひどくなると排尿や排便に異常が出たり、ボタンかけが難しくなる、階段を降りるのはこわくなるなどの症状が出ます。これは首の骨(頚椎)の中を走る太い神経(脊髄)が障害されることによるものです。
椎間板が加齢などで変性し、後方へ突出して起こります。30歳~50歳代に多く、特に誘因がなく発症します。症状としては首や肩甲部、上肢に痛みやしびれが放散したり、ハシが使いにくくなったり、ボタンがかけづらくなったりします。また、足のもつれ、歩行障害が出ることもあります。まれに排尿障害や狭心症に似た胸部痛がみられます。
中年以降、特に50歳代に多くみられ、その病態は多彩です。関節を構成する骨、軟骨、靭帯や腱などが老化して肩関節の周囲の組織に炎症が起きることが主な原因と考えられています。肩関節の動きをよくする袋(肩峰下滑液包)や関節を包む袋(関節包)が癒着するとさらに動きが悪くなります。(拘縮またが凍結肩)
40歳以上で男性に多く、発症年齢のピークは60代です。肩の運動障害、運動痛、夜間痛を訴えますが、夜間痛で睡眠がとれないことが来院する一番の理由です。運動痛はありますが五十肩と違うところは、拘縮、すなわち関節の動きが固くなることが少ないです。
加齢、労働、あるいは背骨の病気による影響で変形した椎間板と、椎骨や椎間関節から突出した骨などにより、神経が圧迫されます。この疾患では長い距離を続けて歩くことができません。もっとも特徴的な症状は、歩行と休息を繰り返す間欠性跛行(かんけつせいはこう)です。背筋を伸ばして立っていたり歩いたりすると、ふとももや膝から下にしびれや痛みが出て歩きづらくなります。しかし、少し前かがみになったり、腰かけたりするとしびれや痛みは軽減されます。進行すると、下肢の力が落ちたり、肛門周囲のほてりや尿の出が悪くなったり、逆に尿が漏れることがあります。
腰や臀部が痛み、下肢にしびれや痛みが放散したり、足に力が入りにくくなります。
背骨が横に曲がり(疼痛性側弯)、動きにくくなり、重いものをもったりすると痛みがつよくなることがあります。椎間板は線維輪と髄核でできていて、背骨をつなぎ、クッションの役目をしています。その一部が出てきて神経を圧迫して症状が出ます。椎間板が加齢などにより変性し断裂して起こります。悪い姿勢での動作や作業、喫煙などでヘルニアが起こりやすくなることが知られています。
股関節症の主な症状は、関節の痛みと機能障害です。股関節は鼠径部(脚の付け根)にあるので、最初は立ち上がりや歩き始めに脚の付け根に痛みを感じます。関節症が進行すると、その痛みが強くなり、場合によっては持続痛(常に痛む)や夜間痛(夜寝ていても痛む)に悩まされることになります。患者さんの多くは女性ですが、子供の時の病気や発育障害の後遺症が主なもので股関節症全体の80%といわれています。最近は高齢社会となったため、特に明らかな原因となる病気に罹ったことが無くても年齢とともに股関節症を発症してくることがあります。
股関節のなかの大腿骨の頭の部分を大腿骨頭と呼びます。この骨が死んでしまう病気を大腿骨頭壊死症といいます。原因はまだはっきりとはわかっていませんが、男性ではアルコール多飲、女性ではステロイド(副腎皮質ホルモン)剤の服用に関連して生じることが多いことが分かっています。全く痛みのない時期もあります。ちょっとしたはずみで急に足の付け根が痛くなりますが、2~3週間で落ち着くこともあります。しかし痛みを我慢して放置していると、病気が進行し痛みで歩けなくなることもあります。
男女比は1:4で女性に多くみられ、高齢者になるほど罹患率は高くなります。主な症状は膝の痛みと水がたまることです。
初期では立ち上がり、歩きはじめなど動作の開始時のみに痛み、休めば痛みがとれますが、正座や階段の昇降が困難となり(中期)、末期になると、安静時にも痛みがとれず、変形が目立ち、膝がピンと伸びず歩行が困難になります。
半月は膝関節の大腿骨と脛骨の間にあるC型をした軟骨様の板で内側・外側にそれぞれがあり、クッションとスタビライザーの役割をはたしています。これが損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に痛みやひっかかりを感じたりします。ひどい場合には、膝に水(関節液)がたまったり、急に膝が動かなくなる“ロッキング”という状態になり、歩けなくなるほど痛くなります。
捻挫とは、関節にかかる外力により非生理的運動が生じ、関節を支持している靭帯や関節包が損傷することです。足関節では図1の前距腓靱帯が損傷されることが最も多い病態です。
靭帯の損傷程度によって、捻挫の程度を三つに分けています。
靭帯が伸びる程度の損傷を1度捻挫、靭帯の一部が切れるものを2度捻挫、靭帯が完全に切れるものを3度捻挫と定義しています。
外脛骨は足部過剰骨の中で最も頻度が高く、後脛骨筋腱が付着する舟状骨の内側後方にみられます。正常人の15%前後にみられるといわれており、女性に多く、80~90%は両側性です。発症すると足の内くるぶしの前方足底側に硬い隆起物が触れるようになり、そこを押すと強く痛みます。スポーツ活動の盛んな10~15歳の思春期に発症することが多い足部の障害です。
「手外科」とは整形外科の中でも上肢の疾患(いわゆる肩から下の部分、腕、肘、手首、指など)を対象とします。日常生活での手の使用頻度は高く、そのため外傷にさらされやすく、また使いすぎなどによる腱鞘炎や関節炎の発症率も高くなります。ちょっとした手の機能障害によっても不便な生活を強いられることになります。また女性で40代を過ぎると手の痛みで悩まされることが多くなります。特に手には狭い範囲で指を曲げ伸ばしする腱、細かい筋肉を動かす運動神経、手指の感覚を司る感覚神経、血管などが多く詰まっている繊細な構造をしています。手の痛みの診療を希望される患者様のニーズに応えるとともに、ほんの小さな怪我でも不自由な思いをされた方がいらっしゃいましたらお気軽にご相談下さい。
指は腱によって曲げ伸ばしをすることが出来ます。屈筋腱には、腱の浮き上りを押さえる靭帯性腱鞘(じんたいせいけんしょう)というトンネルがあります。屈筋腱と靭帯性腱鞘の間で炎症が起こると、指の付け根に痛み、腫れ、熱感が生じます。これを腱鞘炎と呼び、進行するとばね現象が生じます。これがばね指です。更年期の女性に起こることが多く、妊娠時や産後に生じることもあります。
治療としては保存療法で安静、装具を当てての固定。腱鞘内に局所麻酔の入ったステロイド剤を注射して症状を抑えます。保存療法で効果がない、指が曲がったままや伸びないときは手術療法が選択されます。
手関節の手のひら側に手根管という神経や腱が通るトンネルがあり、このトンネルが狭くなることで正中神経という神経が圧迫をされ、母指から薬指にかけてのしびれが出現します。症状が進むと、母指の筋萎縮もみられてきます。多くは原因不明ですが女性に多く、また糖尿病や透析を受けている方にも多くみられます。軽症であれば、投薬や注射、装具治療を行い、効果がない場合や重症例では狭くなったトンネルを広げる手術(手根管開放術)を行います。
中年~高齢の女性に多くみられます。物をつまむ動作や瓶のふたを開ける時など、母指に力を必要とする動作で母指の付け根に痛みが出ます。進行すると母指が効きにくくなり、CM関節(付け根)の変形は外見からもわかるようになります。母指CM関節はよく動く関節なので、使い過ぎや加齢に伴って発症します。治療としては保存療法(投薬、固定装具、温熱療法、関節内注射など)が有効です。保存療法でよくならない場合は、手術治療を行うこともあります。
中年以降の女性にもっとも多い骨折のひとつです。転んで手を突いて、手首に痛み、腫れが出たような場合にはこの骨折が疑われます。診断にはレントゲン検査が必要です。骨折のズレは手を引っ張ったりなどして、もとの形近くに戻し、ギプスなどの固定をします。ギプス固定中であっても指を積極的に動かすようにします。固定しても骨折のズレが大きい場合は手術療法が適応になります。
TFCCとは小指側の手首にある軟骨や靭帯などの複合体です。日本語では三角繊維軟骨複合体と言います。転倒して手を突いた時などの外傷や、慢性的な手首の使い過ぎ、加齢性の変化で生じる場合があります。治療としてはアイシングと患部の固定を行う保存療法が適応になります。
関節の周辺に米粒大からピンポン玉くらいまでの腫瘤ができます。手を使いすぎると腫瘤は大きくなることがあります。手首の甲にできる事が多く、軟らかいものから硬いものまであります。不快感がありますが多くの場合強い痛みはありません。ただし、神経が圧迫されると痛みが出ることもあります。女性に多いですが必ずしも手をよく使う人に多いとは限りません。大きくなるもの、痛みが強いもの、神経が圧迫される症状が出るものに治療が必要です。注射器で内容物を吸引したり、繰り返し内容物が溜まる場合には手術により摘出することもあります。いずれの治療方法でも再発する場合があります。
中年以降のテニス愛好家に生じやすいのでテニス肘と呼ばれていますが、一般的には年齢とともに腱が痛んで発症します。物をつかんで持ち上げるような動作をすると肘の外側から前腕にかけて痛みが出現します。多くの場合、安静時の痛みはありません。治療としてはリハビリでのストレッチを中心に、テニス肘用バンドを装着します。痛みが強い場合は局所麻酔の入ったステロイド注射を行います。